演劇

舞台「ピグマリオン」千穐楽

さとみちゃん主演の舞台「ピグマリオン」の千穐楽を観てきました。

私の「ピグマリオン」観劇は、これで4回目ですが、2週間ぶりということで、その間にセリフの言い回しや、演技が変わったかなと思った部分が結構ありました。

イライザがヒギンズに、レッスン料は60ポンドと言われて、そんなに払えないと泣く所では、イライザが床に寝転んで泣いたり、イライザが初めてヒギンズ邸の自分の部屋に入ったとき、ベッドでの上でのはしゃぎっぷりが派手になっていたり、ヒギンズに初めてアルファベットの読み方を習うシーンで、イライザの開脚度(^_^;が大きくなっていたり、同じシーンで、ヒギンズが怒って部屋を出て行った後、イライザがチョコレートをつまみ食いしたりしていました。

また、イライザやヒギンズ、ピカリング大佐の身振り手振りも大きくなっていたような気がしますし、冒頭のコヴェント・ガーデンのシーンでのイライザのセリフも、若干ゆっくり目にハッキリ発音するようになっており、以前より聞き取りやすかったように思います。

演じていく中で、さとみちゃんを含め、役者さんや演出家さん達が、より良い舞台にするために試行錯誤した結果なのかなと思いました。

カーテンコールは、3回ありました。2回目のカーテンコールで会場はスタンディングオベーション、その様子を見てさとみちゃんも若干涙ぐむような表情をしていました。

そして、3回目のカーテンコールでは、さとみちゃん、平さん、小堺さんの挨拶がありました。まず、平さんと小堺さんに促されて、さとみちゃんが前に出ると、「これまで、こんなに終わって欲しくない舞台は無かった、ここにいる、キャスト、スタッフ、そして観に来てくださった皆さん方のおかげで素晴らしい舞台になりました。ありがとう御座いました。」と目に涙を浮かべながら挨拶しました。

続いて平さんが、さとみちゃんに促されて、「こういうの苦手で、変な汗をかいています、ありがとう御座いました」と、ちょっと困ったような顔で挨拶しました。

最後に小堺さんが、面白いことを言えよ的な空気を感じたのか、「ものすごい期待を感じます」と笑いを誘っていました。そして、「舞台は、終わってしまうと消えてしまう、是非皆さんの心の中に残しておいてください。」というような事を言っておられました。

私が、今回4回も舞台を見に行ったのは、まさにこのためで、今回の舞台がDVDやテレビ放送(TBS協賛なので期待していたのですが)として記録される保証もなく、再演されるかどうかもわからなかったため、しっかりと目に焼き付けて、記憶に留めたいと思ったからです。

結局、映像化はされませんでしたので、私の判断は正解だったと思います、何よりもこの素晴らしい舞台を4回も見られたことが嬉しかったです。私が地方住まいでなく、東京に住んでいたなら、もっと見に行ったのですが。

さて、イライザとヒギンズの恋(?)の結末ですが、前回、感想を書いたときに、イライザがフレディーと結婚したのは、結局は、良いことだったと書いたのですが、今日、大使館のレセプションで、いっしょにダンスを踊るヒギンズとイライザを見て、凄い幸せそうで、楽しそうで、やっぱりこの二人に結ばれて欲しいと思うようになりました。

また、第5幕の二人のやりとりでは、ヒギンズもイライザも遠回しに好きと言っているようにも聞こえました。特にヒギンズの方はプライドが邪魔をして、自分の素直な気持ちを言えないでいる、そんな不器用な男の姿が垣間見られる気がしました。

劇の結末は曖昧で、その後、どっちとも取れるような終わり方になっていますが、戯曲の作者のバーナード・ショーは、「ピグマリオン」の初演でイライザを演じた女優に振られた腹いせに、わざわざ後日譚を書き、その中でイライザはフレディーと結婚し、ヒギンズとは、結ばれないと結論づけています。ヒギンズはショーそのものだったという説もあります。

ただ、その後日譚の中で、イライザのこととして

時には、密かに、彼を無人島に連れ出し、あらゆるしがらみから解き放ち、気にしなければならない人間が誰もいない所に二人きりになって、彼を台座から引きずり下ろし、普通の男並みに恋をささやかせてみたい、と悪戯っぽく想像することもある。
※光文社古典新訳文庫「ピグマリオン」より

と書いていて、ヒギンズが心を入れ替えプライドを捨て、イライザの前にひざまずいて、「ミス・ドゥーリトル、どうか私と結婚してください。」と言うところを想像すると、おかしくなると共に、幸せな気分にもなれるのでした。

バーナード・ショーは、戯曲「ピグマリオン」の序文で、「偉大な芸術は教訓的にしかなり得ない」(※同上)と述べています。

この舞台、「ピグマリオン」から私が得た教訓は、女性には決してヒギンズ教授の様に接してはならないというものでした。

おしまい。

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