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映画「幕末高校生」感想

大変遅くなってしまいましたが、公開初日に観た映画「幕末高校生」の感想を書きたいと思います。公開中と言うことでストーリー上重要な箇所のネタバレはしませんが、差し障りのないと私が考えた範囲でのネタバレがありますので、ご注意ください。

さて、この映画を一言で言うと、高校教師の川辺未香子(石原さとみ)が、ひょんなことから幕末にタイムスリップしてしまい、そこで出会った勝海舟(玉木宏)を罵倒したり、一緒に逃げたり、ときめいたり、尊敬したりする映画です。

ついでに、未香子と一緒にタイムスリップした生徒たちが、「るろうに剣心」だったり、おっさんを籠絡したり、恋人探しのために放火しちゃったりと問題ばかり起こします。

そんな未来からの厄介者と出会った勝海舟は、これまた、これまでの幕末の偉人のイメージとはほど遠い、のんびりやでへたれでスケこましと、とても情けない男だったりします。

主人公の勝海舟については、実は恥ずかしながら私はあまり良く知りませんでした。歴史小説は好きで良く読んでいたのですが、幕末物はあまり読んでいなくて、読んだ本もどちらかというとマニアックな吉田松陰(山岡荘八歴史文庫)、高杉晋作(司馬遼太郎著「世に棲む日々」)、河井継乃助(司馬遼太郎著「峠」)などが主人公のものだったため、勝海舟はあまり出てこない人だったので。

そんなわけで、この映画にさとみちゃんが出ると分かって、「勝海舟と西郷隆盛」(岩波新書、松浦玲著)を購入したりして勉強したのですが、映画を観るためにはあまり必要なかったです。辛うじて、なぜ、勝海舟が西郷隆盛をあんなに信じていたのか、その理由が分かるくらいですね。映画の中ではその辺について一切触れられていなかったので、不思議に思う人もいたかもしれません。

一方、ヒロインの未香子は生徒達から「川辺に進路指導されてもね、プッ」と陰で笑われる、信頼度0の情けない教師で、そのことを知って、「私、先生に向いてないのかな」とお酒を飲みながら勝海舟に人生相談しちゃったりもします。

そんな、勝海舟と未香子達が起こすドタバタコメディーぶりが面白かったです。

さて、なぜ歴史が変わってしまったか、この物語の根幹をなす重大な出来事が、勝海舟と敵対する陸軍副総裁、柳田龍三(柄本明)に起こるのですが、、犯人はお前か!と突っ込みたくなること請け合いです。柳田役に柄本明さんをキャスティングしたのはこういう事かと合点がいきました。

さらに、この映画の面白いところは、幕末にタイムスリップする4人の到着する時間をずらしたこと。そのために、それぞれの幕末と現代に対する想いに違いが生じ、そのことがストーリーにも関わってくるというのは斬新だなと思いました。なにせ、一番早く(1年前)きた一人は自暴自棄になり「るろうに剣心」に成っちゃうんですから。

さとみちゃん的な見所はなんと言っても未香子の着物姿でしょう。生徒達の本音を聞いた未香子が落ち込んで寂れた小屋のようなところの端に座り物思いに耽るシーンは、儚さと憂いを帯びた表情が美しかったです。

ただ、勝海舟と酒を飲みながら自分のことについて話すシーンでは、「今、うなじ見てたでしょ」のCMを思い出さずには居られませんでしたが。(^_^;

西郷の元に向かおうとする勝を阻止しようと、柳田の家来たちが勝に襲いかかるシーンでは、玉木さん演じる勝海舟がとても格好良かったです。

この後の勝と江戸の人々の絆を象徴するような出来事が凄く感動的でした。勝が江戸の街を如何に愛していて、そんな勝を慕う町民たちの彼に対する思いがあの奇跡に起こしたのだと思うと、胸に迫るものがありました。

この映画は、時代劇といっても、人は一人も殺されませんし、血も流れません。あ、ちょっとだけ流れますが。(かすり傷程度です)映画「るろうに剣心」(1作目)の冒頭の戦いのシーンで、気持ち悪くなって見るのをやめてしまった私の様に、血飛沫(ちしぶき)とか苦手な方は、ゆるいこちらのような時代劇映画が安心だと思いますので是非映画館で観てみてください。

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