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映画「カラスの親指」blu-ray感想

映画「カラスの親指」のblu-ray本編を鑑賞しましたので、ネタバレ感想を書きたいと思います。本作は、ラストのオチが分かってしまうと面白さが半減してしまうので、まだ、見ていない方は注意してください。なお、特典DVDの内容については、こちらの記事をご覧下さい。

この映画の紹介で、道夫秀介氏の原作「カラスの親指」について、映像化不可能とされていたと書かれていて、よっぽど派手な戦闘シーンや凄惨な殺し合いのシーンでもあるのかなと思っていましたが、ラストの「衝撃の事実」を知って、小説なら書き方次第で読者を騙すことができたとしても、映像化されるとそのものがネタバレになってしまうからなんだと分かりました。

さて、映画の大まかなストーリーは、

自らの悲惨な過去から、まじめに生きることをやめ、詐欺師として生業をたてるベテラン詐欺師のタケ(阿部寛)と、借金苦で自殺するところをタケに助けられ、以来、詐欺師見習いとして、タケに師事する新米詐欺師のテツ(村上ショージ)の元に、ひょんなことから、不幸な身の上を背負った姉妹のやひろ(石原さとみ)とまひろ(能年玲奈)、そして、やひろの恋人の貫太郎(小柳友)が転がり込んでくる。

5人は家族の様に一つ屋根の下で共同生活をすることになるが、タケの過去の行動が原因で、ヤクザ組織に命を狙われる事態になり、その運命に立ち向かうため、5人が一世一代の大勝負に出るという物語です。

まず、映画が始まって約40分間は、さとみちゃんがまったく出てきません。(^_^;

その間に、タケとテツの詐欺師コンビの凸凹な仕事ぶりと、タケが詐欺師に身をやつした理由や、まひろ達姉妹の不幸な過去などが描かれます。

実は、この時、タケとテツが入るラーメン屋で重大なネタバレのシーンがあるのですが、最初見たときは全く気付きませんでした、これに最初から気付いた人はよっぽどの観察眼の持ち主でしょうね。

そして、名前に関わるアナグラムが出てくるのですが、これもラストのネタバレになっています。

やひろとまひろ関連では、まひろがコンビニで周りの目を気にしながらコンドームを購入するシーンがあり、親が居ない境遇で、生活のために援交している設定かと思いドキッとしてしまいましたが、後で、やひろに買いに(盗りに)行かせられたと知ってほっとしました。まあ、そんなことを人前で赤裸々に話す姉妹には別の意味でドキッとさせられましたが。

余談ですが、まひろとタケ達が出会う切っ掛けになる、まひろが財布をスリ盗った太った金持ちの男はリッチマン、プアウーマンのワンダースリーの一人、細木理一こと植木紀世彦さんなんですね。

リチプアをあれだけ何度も見返していたのに、カラスの親指に出演していたことは、劇場で見たときは元よりblu-rayを何度か見返すまで全く気がつきませんでした。(^_^;

さて、肝心のさとみちゃんなんですが、LINEのCM「旅立ち篇」の記事にもちょっと書きましたが、今回、髪型をショートカットにしており、ロングヘアのイメージが強いためか別人に見え、最初から出演すると知っていなければ、さとみちゃんとは分からなかったと思います。さとみちゃんはショートカットにすると、若干幼い感じに見え、綺麗方向より可愛い方向にベクトルが、移る気がしますね。

さとみちゃんの演じるやひろは、わがままで非常識、家事も仕事(スリ)も妹に任せっきりで、終始、貫太郎といちゃいちゃしているだけという、傍からみれば最低の姉です。

しかし、タケに対し、妹のまひろの父親に対する思慕の念や、温かい家庭への憧れの気持ちがあることを話すシーン(カットされた未公開シーン)からは、妹を思いやる優しい一面も垣間見え、また、自分たちの不幸な生い立ちにも卑屈になることもなく、終始明るく振る舞う姿に、実は、わざとそうしているのかもしれないと思せるところもありました。

また、貫太郎とのバカップルなやりとりは見ていてとても面白く、殆どアドリブだったそうですが、思いきりの良いはじけた演技は、さとみちゃんがこれまで演じてきたどのキャラクターとも違っていて、改めてさとみちゃんの演技の引き出しの多さに感心させられました。

後半から、組織に対し「アルバトロス作戦」で反撃に出るのですが、それぞれの得意分野を生かして騙しの仕掛けを着々と整えていくところは高揚感があり、先の展開が気になって話に引き込まれます。

そして、タケ達5人が組織のアジトに乗り込んで一芝居を打つシーンは緊張感があり、特に、組織の親玉であるヒグチが突然登場してくるところでは、一瞬作戦の失敗かとも思わせるところなど、緊迫感の連続です。

なんとかヒグチも出し抜いて、お金をだまし取るところまであと一息というところで、貫太郎が突然、銃を取り出して金を渡せと言い出すのですが、この行動も実は作戦の一部で、その前の貫太郎のネットカフェや公園での謎めいた行動と、作戦中の挙動不審ぶりに、本当に裏切ったのかと自分もまんまと騙されました。

また、この後のまひろが墜落するシーンで、隣の部屋から出て来たキャバ嬢風の女の子は、てっきり、やひろの変装だと思っていたのですが、その後のシーンで、実はまひろが変装していたことが分かり、女の子が化粧次第でいかに変わるかということをまざまざと見せつけられて、愕然としました。(^_^;

最後はすべてが作戦どおりで、組織をまんまと出し抜いてお金を奪い取り大団円で終わるのですが、この映画の肝はその後、すべては、テツの手のひらの上で踊らされていたことが明かされるラストにあります。

このラスト20分の、種明かしがまた面白く、そうだったのかと、もう一度最初から確認したくなって、blu-rayが発売されるのを楽しみにしていました。

最後まで視聴して、「カラスの親指」は、騙す爽快感と騙される爽快感があり、後味の良い心地よさを感じられる良い映画だと思いました。

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