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大河ドラマ「義経 完全版」感想4

大河ドラマ「義経 完全版」DVDのストーリー紹介及び感想の4回目です。

かなりの長文になってしまったので、今回は、第四十四回についてのみ紹介します。
第四十五回「夢の行く先」を追加しました。

第四十四回「静よさらば」

都を戦火に巻き込まないため、都を去る決意をした義経主従。

法皇に、西国に使わせられるように願い出た義経は、地頭として九州へ向かうよう命ぜられます。

一方、静は、母親の磯禅師の元を訪ねていました。「義経様には大事の時ではないのか」と問う母親の言葉に黙ってうなずく静。

さらに、「そのような時に、お側に居ずとも良いのか」と聞く磯禅師に静は、「居とうございます」と、思い悩む表情で答えます。

磯禅師は、「ならば、お供することじゃ」と、やさしく言いますが、静は、「なれど、母上はお一人」と、母を気遣い決心ができない様子。

そんな静に、磯禅師は、「この際、母のことは案ずることはない、己の想いのままに生きなさい、母のことで想いを曲げたことを後々悔やまれては、この私が困る故な」と微笑みながら静の背中を押すように言います。

その言葉に静は、目に涙を溜めて頭を下げるのでした。

夜、義経と郎等達、そして静が館の一室に集まっていました。義経が「今宵、都を去り、豊後国へ向かう」と決然として宣言すると、郎等達が「は!」と応え、静も覚悟を宿した眼差しで頷きます。

義経主従と静は、この夜、200騎あまりを率いて堀川館を出発します。

そして、摂津国大物浦に到着した義経一行は、同行していた源行家の軍勢と別れ、西国に向かう船に乗るのでした。

しかし、海は嵐のため大荒れとなり義経主従たちの船は転覆してしまいます。

どれほどの時間が過ぎたのか、嵐が去り晴れ渡った空の下、打ち上げられた船の残骸が散乱する浜辺に立ち、海をじっと見つめる義経と、奥で横たわる静の姿がありました。

鳥のさえずりと潮騒に、気を失っていた静がハッと気がつき、状況が飲み込めずに慌てて辺りを見回すと、浜辺に一人佇む義経の後ろ姿が目に入り、安堵とも驚きともつかない表情をすると、息を切らしながら起き上がり、砂浜に座りこみます。

その息づかいに気付いた義経が振り返って静の元に駆け寄り、「大事ないか」と心配そうな顔でやさしく問いかけると、静は、もったいないという風に地面に手をつき、「義経様」と義経の顔を見つめて安堵の微笑みを浮かべます。

義経は、おもむろに懐から静の笛を取り出し、「危うく波にさらわれる所であった」と、静に差し出します。

笛を受け取り「ありがとう御座います」と言う静に、やさしく頷く義経。

少し落ち着いた静が、「ここはどの辺りで御座いますか」と聞くと、義経は、「和泉国の辺りだと弁慶が申しておる」と言い、立ち上がってまた海の方を見つめます。

その言葉に、はっと気がついたように、「他の方々は」と聞く静に義経は、「弁慶が様子を見に行っている」と何もわからない様子で答えます。

それを聞いた静は、がっくりとうなだれますが、すぐに顔を上げ、「義経様、ご無事で何よりでした」と、慰めるような表情で言います。それに応えて無言で頷く義経。

その頃、鎌倉では法皇の遣いとして、平知康(草刈正雄)が頼朝の元を訪れ、法皇が頼朝追討の院宣を出したのは義経にせまられてしかたなくである、その証拠に義経が都を落ちたのを機に今度は、義経追討の院宣を下されたと話していました。

それを聞いた頼朝は、法皇を日本一の大天狗と呆れたように言いますが、義経追補のため各地に守護を置き、荘園ごとに地頭を置くことを知康に認めるよう迫り、さらに、義経と行家を追い捕らえることの許しを得ます。

浜辺が夕日にそまるなか、海を見つめ弁慶の帰りを待つ義経と静。

そこに、弁慶が戻り、周辺の浜一帯を探したが、誰の姿もなかったと報告します。それにと、言いにくそうに言葉を濁す弁慶に義経がどうしたのかと問うと、弁慶は重い口を開き、「噂によれば、法皇様が、義経様と行家様の追討の院宣を下されたと」と、うなだれた様子で答えます。

その言葉に愕然とする義経と、目を見開き信じられないと言った様子で義経を見つめる静。

「法皇様が私を追討、これは何かの間違いじゃ」と呆然として呟く義経、しかし、次の瞬間、「直ちに都に立ち返る」と激昂して言い放ちます。

他の郎党達のことを気にしながらも、義経達三人は再び都を目指しすことになります。

夜になり、荒れ果てた古寺で休む三人。義経が外の様子をうかがうと、かがり火を持ち人を探す武装した侍達の姿が目に入ります。

寺の奥に隠れた義経達ですが、侍達は寺の中にまで探索の手を伸ばそうとしたため、やむなく打って出ます。

敵の侍を次々と切り倒していく義経と弁慶、その様子を寺の中から心配そうにうかがう静。その背後に突然敵の侍が現れ静を抱きかかえるように捕らえようとします。

静は、悲鳴をあげながらも、侍の腕に噛みついて振り払いなんとか逃れますが、その先にも別の侍がいて捕まってしまいます。静あやうし!

その時、無数のコウモリが飛来し、侍たちをひるませると、寺の境内に突風が巻き起こり、閃光が走り、錫杖の音が響きわたります。

義経と弁慶が何事かと目をこらすと、「はっはっはっは、ふぇーはっはっは」Ψ(`▽´ )と不気味な笑い声を響かせながら、鬼一法眼(義経の鞍馬寺での武術の師匠:美輪明宏)が現れ、侍達は「物の怪じゃ」と言いながら逃げ出していきます。

そう言えば、もののけ姫の育ての親でした。(^_^;

「法眼様」と、ひざまずき、師匠との再会を喜ぶ義経。

都に向かうという義経に法眼は、言っては成らぬ、義経が行けば都は騒乱の渦となる、もはや都には義経の居場所はないと言って引き止めます。

追っ手が来る前に早くこの地を立ち去るようにと言う法眼に頭を下げ、義経達三人はその場を立ち去るのでした。

日が昇り、森の中で休む義経たち三人の前に、またしても追っ手の侍たちが現れ、襲いかかってこようとします。

その時、藪の中から三郎、次郎、忠信の三人が現れ、侍たちに向かって行きます。喜ぶ義経たち三人。

弁慶も加勢に入り、侍たちを撃退していきますが、またしても背後に回った侍が静に短刀を突きつけ、「静にしろ」と脅し、それに気付いた義経に太刀を捨てろと命令します。

私のグランパやビーバップハイスクールといい、このころのさとみちゃんは人質になる役が多いですね。(^_^;

その後、何とか敵を退け、再会を喜ぶ義経と郎等たち、人の居ない小さな神社の境内に隠れ、これまでのいきさつを話します。

「他の者は、喜三太や義久は」と弁慶が問うと、「浜辺でしばらく待ちましたが・・・」と言葉をにごす忠信。

それを聞いた義経は、険しい表情で地面を見つめます。

そんな義経に静が、「きっと、巡り会えまする、鬼一法眼様が仰せられたでは御座いませんか、義経様は人を引きつけると、こうして忠信様も、三郎、次郎殿も」と励ますように笑顔で言うと、義経も、「そうだな、その時を待とう」と、静の方を向いて穏やかな表情で言い、郎党たちも笑顔でうなづきます。

これからのことを聞かれた義経は、どうしても都に入り、法皇に追討の院宣を覆してもらわなければならない、それが叶わなければ西国にも行けないと言いますが、弁慶が、ひとまず吉野山の金峯山寺に向かいましょうと提案し、義経や他の郎党たちも同意します。

吉野

義経一行が、吉野の金峯山寺に入って数日がたったころ、金峯山寺の僧坊でむしろの上に横たわって眠っている静の姿がありました。

その傍らで心配そうに様子を眺めていた義経が手のひらでそっと静の額に触れると、その温もりを感じて目を覚ました静が、辛そうにゆっくりと体をおこします。

「具合でも悪いのではないのか」と、やさしく聞く義経に、「いえ、少し疲れが」と返す静。

そばにいた忠信が、「海を漂い、山中を歩かれ、静様にはさぞ難儀で御座いましたな」と労るように言うと、静は、「夜露のしのげるところで、こうして休みました故,だいぶ楽には」と二人を安心させるように、微笑んで言います。

そこに、麓の様子を探りに出ていた三郎が帰ってきて、追補の兵どもがあちらこちらと探し回っていると報告し、さらに弁慶と次郎が慌てて駆け込んできて、武装した僧兵たちがこちらに向かっていると告げます。

僧坊を出て、僧兵たちに斬りかかる三郎、次郎、忠信の三人。その間に義経と弁慶、静の三人は、山の上の方へ続く階段を駆け上がり追っ手からの逃れようとします。

悲鳴を上げる体をおして必死に走る静を、心配そうに振り返りながら走る義経。

三人は、なんとか無人の小さな寺の本堂の中に隠れることができ、弁慶が外の様子をうかがっています。

その後ろで、苦しそうに息を整えようとしている静を、気遣うように見つめる義経。そこに、忠信たち三人が追いついてきます。

もはや、山を下りることはできないと悟った義経は、熊野への道を行くしか無いと言いますが、三郎たちは、雪の降る険しい山道に静を連れて行くことを躊躇します。

その様子に静は、「私はここに残ります」と決然とした表情で言い、その言葉に驚いたように静の顔を見る義経や、言葉に詰まる郎等達に対し、「皆様の足手まといになるわけにはいきませぬ。私を置いて行かれませ」と、悲壮な決意を瞳に宿して言います。

反射的に、「それはできぬ」と語気を強めて言う義経。三郎、次郎、忠信も声を揃えて頷きます。

しかし、静は、「いいえ、私の事で、義経様の身を危うくしてはなりませぬ、新しき国のために、事の分別を違えては成りませぬ」と厳しい表情で訴えると、義経の顔を見つめて、「大事の前の小事に御座ります。」と、悲しみを隠すようにかすかに微笑みながら訴えます。

静の固い決意を知った義経は、静に都の母親の元に帰るように言い、忠信と次郎に静の伴をするように命じます。

しんしんと雪の降り積もる中、山道を行く蓑姿の義経たち、やがて分かれ道にさしかかると、弁慶が都への道を指し示します。

市女笠をかぶり、肩蓑を羽織った静に義経が歩み寄り、「静」と、愛しい人の名を記憶にとどめるようにやさしく呼ぶと、静は、「はい」と愛する人の顔をその目にしっかりと焼き付けるように、じっと見つめて応えます。

「これは、一時の別れぞ」と言う義経に、「はい」と声に力を込め応える静、そして、懐から自分の笛を取り出すと、「海にも流されず、手元に残った笛に御座います。お守りの代わりに是非」と義経に差し出します。

笛を受け取り、「これを静と思うて参る」と、哀感の表情を浮かべて言う義経。

その言葉に静は、悲しみと寂しさの色を映した瞳で義経の顔を見つめてうなずくと、感情を押し殺す様に、「では」と告げます。その顔を辛そうにみつめて、小さくうなずく義経。

静は、義経からすっと視線を外して振り返ると忠信、次郎と共に都へ向けて歩き出しますが、数歩歩いた所で立ち止まり、義経の方を振り返ると、深々とお辞儀をした後、大丈夫というようにそっと微笑んで、また、都に向けて歩き出します。

その後ろ姿をただじっと見つめる義経。これが、義経と静の今生の別れになることは、この時、誰もわかりませんでした。

この一連の義経と静のやりとりの際のさとみちゃんの表情がとても美しく、市女笠から覗く顔は、まさに絶世の美女とうたわれた静御前そのものと感じられました。

また、このシーンでは、感情をほぼ目だけで表現していて、静の深い悲しみと寂しさが漆黒の瞳のかすかな揺れに映し出されるのが感じられて、さとみちゃんの感情表現力の高さを感じられる回でした。

さて、この義経と静の別れのシーンについて、鴻上尚史さんの主催する劇団「第三舞台」のホームページで、面白い話を見つけたので紹介します。以下、劇団「第三舞台」のホームページからの引用です。

いろんな人たちが上演できる戯曲を、日本の劇作家はどうして書かないの?という役者さんからの発言はよく判るんです。

文学がまずあって演劇にいった国と、弁当ひろげてお気に入りの役者を観にいくことから演劇が定着した国との違いでしょうね。「千本桜」でね、静御前が義経との別れの時にずーっと泣いているでしょ。
泣いているんですけど、突然、静御前がおどり出す(笑)。
で、イアホンガイド聞くと
「この場面では、静御前が微笑んでいる顔が見たいというお客さまの要望におこたえして、踊っています」っていう(笑)。
なんてファンキーな民族なんでしょう(笑)。

この「千本桜」は、調べると歌舞伎の演目「義経千本桜」のことの様です。日本人は、昔から、演劇(歌舞伎)を観に行くというより、役者を観に行くというおもむきが強かったようで、ジャニーズや女性アイドルが、演劇やドラマに重用される理由がわかる気がします。かく言う私もさとみちゃん目当てでこの作品を見ていますしね。

それにしても、義経と静御前の別れのシーンで突然踊り出す静御前(さとみちゃん)、是非見てみたい気もしますね。(^_^;

第四十五回「夢の行く先」

静たち一行は、道案内の雑色を雇い、都を目指していました。

雪の降りしきる山道を歩く静の表情は苦しげで、はぁはぁと息も荒く足取りもおぼつかない様子に、忠信と次郎は体の具合が悪いのではと心配して聞きますが、静は、にっこり笑って大事有りませんと言います。

言葉とは裏腹にかなり辛そうな様子の静に、次郎がこの辺で少し休みましょうと言いますが、お気遣い無くと先を急ぐように歩きだす静。

しかし、目の前に武装した侍たちが現れ、どこへ行くと静たちを問い詰めます。忠信は、「吉野詣でを済ませ、都に帰る途上である」と答え静を一条民部省の姫君であると言いますが、納得しない侍たちは、この地の目代様の屋敷に同道願いたいと迫ります。

それはできぬと抵抗の構えを見せる忠信と次郎に、侍たちが殺しても構わないと斬りかかってきます。

静を庇い、多勢に臆すること無く侍たちと戦う忠信と次郎の二人、その時、案内に雇っていた雑色が逃げようとして侍に切られそうになったたため、静がとっさにとめようとします。

侍に突き飛ばされ、転倒する静。侍たちは静のみぞおちの辺りを殴って気絶させると抱え上げて連れ去ろうとします。

それに気付いた忠信と次郎が後を追おうとしますが、侍達に阻まれ近づくことすらできません。

次郎が、「ここはわしが、(忠信は)姫を」と言い、忠信が「頼む」と敵を振り切って後を追います。

場面が変わり、熊野を目指す義経一行立ちの耳に、鳥の騒ぐ鳴き声が聞こえてきて、立ち止まった義経の心に、静の「義経様」という声が聞こえ、義経は、静たちが向かった方を心配そうに振り返ります。

場面が戻り、山の中を静の名を叫びながら探しまわり、足を滑らせて谷底に落ちてしまう忠信。侍たちを相手に、必死に奮闘する次郎。気絶したまま侍に担がれて連れて行かれる静の姿は、すでにその二人の声すらも届かない遠い距離にありました。

熊野についた義経主従は、弁慶と旧知の間柄だった僧侶を頼って小さなお堂に留まっていました。

弁慶から、義経をかくまうように法皇から諸国の寺社に対して密かにお達しがあったことを聞き、法王様はやはり私を見放していなかったと喜ぶ義経。何とかして都に戻り、法王様に追討の院宣を取り下げてもらうと言います。

法皇は、公家達を勝手に下官させるなど横暴な頼朝に対抗させるため、義経を利用しているだけなのですが、単純な義経(と家来たち)は、まんまと良いように利用されてしまいます。

熊野を出て、京の都に向かう義経たちですが、都には入れず、春になっても近江の寺で息をつめたように留まっていました。

そこに、うつぼと、海で行方不明になっていた喜三太と義久が現れます。再会を喜ぶ義経主従たち。静や忠信、次郎の消息も吉次やお徳たちが調べてくれているとうつぼに聞き、義経と弁慶は、少し安心したように顔を見合わせてうなづくのでした。

数日がたち、慌てて寺に入ってきた喜三太が、静は六波羅の鎌倉方の屋敷にとらわれていると伝えます。静が無事でいたことに安堵の表情を浮かべる義経主従たち、忠信と次郎もきっと無事でいると励まし合います。

北条時政の屋敷の庭に座らされ義経の行方について詮議を受ける静。その非常な決意を秘めた眼差しと、キッと結ばれた口元からは、殺気にも似た雰囲気を漂わせていました。

義経はどこにいるとの北条時政の問いに、「存ぜぬ事に御座います」としか答えない静。さらに、義経の逃亡を手助けした者立ちの名を問いただす時政ですが、静は、「私に義経様の消息をお教えくださいませ」と時政をにらみつけるように言います。

その言葉に、激昂する時政。それを見た静は、「義経様は、まだ鎌倉方の手には落ちていないと言うことで御座いますな」とかすかな微笑みと鋭い眼差しを時政に向けて言います。

このシーンでは、時政が怒ったことにひるむのではなく、逆に義経の無事を知ってほっとするという静の感情の変化を、さとみちゃんが表情の一瞬の微妙な変化で表現していて、とても格好良く見えました。

一方、義経主従たちは、頼朝の寺社に対する締め付けが強くなり、寺にいるのも危なくなってきたことから近江を出ることを決意し、商人の吉次の手配で京の都の三条の辺りに隠れ家を用意してもらい、そこに隠れることになりました。

そこへ、うつぼに伴われて、行方不明だった次郎が入ってきて、泣きながら地面に突っ伏します。静を守り切ることができずここで腹を切って詫びるという次郎を、弁慶や三郎たちが止め、義経も静のことでは苦労をかけた、これからも私に仕えよと命じます。号泣する次郎。

月日が無情に過ぎ去り、頼朝勢の警備が堅く、法皇に近づけない義経は、平泉の藤原秀衡を頼ることを決心し、郎党たちに、静を救い出して共に平泉に行きそこで新しき国を作ることを宣言します。

とらわれた屋敷の部屋に座り、格子窓から夕日を見つめる静、その顔には絶望では無く、希望の微笑みが浮かんでいました。

「しずやしず」、大河ドラマ「義経 完全版」感想5に続く

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