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新春ドラマスペシャル“新参者”加賀恭一郎「眠りの森」感想

さとみちゃんが出演していた、TBSの新春ドラマスペシャル“新参者”加賀恭一郎「眠りの森」を視聴しました。一言で言うなら、さとみちゃんの圧巻の踊りと華麗なバレエシーンに魅了された2時間半でした。

今回は、ドラマのネタバレ感想を書いていますが、原作の小説のことも一部触れていますので、原作をこれからお読みになる方は、細かい部分(特に未緒関連)でネタバレがありますので、注意してください。(原作は原作としての感動がありますので)

さて、ドラマの内容ですが、冒頭の加賀刑事(阿部寛)と、お見合い相手の山田さん(仲間由紀恵(笑))が、「白鳥の湖」を観劇するシーンは、完全に狙っているキャスティングでしたが、面白かったです。

浅岡未緒(石原さとみ)の踊る「白鳥の湖」の黒鳥のオディールは、ダイナミックで力強く、また、王子を誘惑する場面ということで、妖艶で美しい舞が、まさに魔性の女石原さとみの本領発揮という感じの素晴らしいシーンになっていました。

「白鳥の湖」の見所の一つである32回転のグランフェッテもちゃんと回転しているように見えました。数えた所27回は回っていましたが、実際には、撮り直し等でそれ以上回っているのでしょうね。途中、ちょっと軸足が横にぶれたり、左手が若干下がり気味だったりしていたのは、逆に、実際にさとみちゃんが踊っていたことの証明かなと思いました。(Youtubeで見た本職のダンサーは、もっとずっと早く回転していましたし。)

それも録画を何回も見直して分かる程度で、素人目には、ほぼ完璧に踊れていた様に見えたのではないでしょうか。(私も素人ですが。)この辺は、公式HPで発売が発表されたDVDに収録されるであろうドラマのメーキングでも見られると思うので、発売が今から楽しみです。しかし、なぜ、DVDだけ?blu-ray版も出してくださいTBSさん、お願いします。( ̄人 ̄)

音月桂さんは、完璧にプリマの高柳亜希子を演じていて、踊るときの姿勢や回り方も綺麗で、さすが元宝塚の方だなと思いました。

年末年始に再放送されていたドラマ「赤い指」や「新参者」を見て、鋭い洞察力を持ちながら、被疑者やその周りの人々の心の奥底を一つ一つ丹念に紐解くような捜査と、人情味のある接し方をする阿部寛さんの演じる加賀恭一郎という人物が凄く好きになっていたので、その面でも楽しめました。あと、加賀恭一郎はちょっと刑事コロンボっぽい所もありますよね、一旦帰ろうとして振り返って「もう1点だけ聞かせてください」と言う所とか。

録画を見直していて気付いたのですが、加賀恭一郎が事件後初めて高柳バレエ団を訪れ、団員の前で大田刑事(柄本明)が、被害者の風間利之の写真を掲げて「この男ご存じありませんか」と聞く場面で、皆が写真をよく見ようとのぞき込む中、第二の事件の犯人である森井康子一人だけが目線を逸らしているのですね。推理ドラマの好きな方はこういうシーンはたまらないでしょうね。

斉藤葉瑠子の取り調べ中の回想シーンで、葉瑠子が未緒と楽しそうにドライブしているシーンは、タイヤ館の「アライメント♪、アライメント♪」というCMが頭に浮かびました。(^_^;

ドラマで加賀はニューヨークまで自ら行って捜査していますが、原作では、加賀はニューヨークへは行かず、大田刑事が冗談で、「日本の刑事が、海を越えて活躍か。刑事ドラマのスペシャル版の様な話だな」と言うセリフがあって、スペシャルドラマでニューヨークって昔から有ったのかと思いました。

あと、さとみちゃんとの撮影時には、まだ、阿部さんのニューヨークロケはしていなかったと思うので、最近の番宣で阿部さんと再会したときに、目をキラキラ輝かせながら「ニューヨークに行ってきたんですか-、私ニューヨーク大好きなんです、私も行きたかった」というような会話を交わすさとみちゃんの姿が目に浮かびました。(ー▽ー )

「眠りの森の美女」のゲネプロで、バレエマスターの梶田康成が未緒に厳しく指導するところは、やはり、舞台「ピグマリオン」の、ヒギンズ教授とイライザを思い出してしまいました。(^_^;

事件の真相に絡んで、バレエマスターの中野妙子が語る、加賀が魅かれた未緒の黒鳥の踊りを、”いままでと違う”ことにしたことと、未緒が倒れて、加賀が彼女のアパートを訪ねたシーンで、加賀が未緒に話す内容が、「楽しい話」から「剣道のライバルが死を覚悟した時の凄みの話」に変わっていたのは、未緒の病気が深刻なものであり、事件とは別のストーリーとして意識させ、犯人であるという可能性から視聴者の意識を遠ざける意図があったのかなと思いました。

というのは、原作でも未緒が犯人なのかなと薄々感じる時があるのですが、そのたびにそれを否定するようなシーンが出てくるのでホッとするという事があり、やはり、浅岡未緒と加賀が結ばれて欲しい、そのためにはやはり未緒が殺人犯であってはいけないと思いながら読んでいたので、ある意味、加賀の恋心という作者の仕掛けに私はまんまとはまってしまっていたのかも知れませんね。

ただ、未緒の犯行の動機が、バレエ団の絶対的な存在であるプリマを守るため(こちらの方が理解しがたいのは分かります。)ではなく、自分の最後の舞台を守るためとしたことについては、未緒が自分勝手な人間に見えてしまってこれで良かったのかなと疑問に思いました。

未緒の最後の舞台である「眠りの森の美女」でのフロリナ姫の踊りは、「白鳥の湖」の黒鳥とは打って変わって、明るく軽やかで、可愛らしい感じでした。それだけに、踊り終わった後、涙を流しながらも満足げに微笑む未緒の世界から拍手の音が消えた瞬間は、ぞわっと鳥肌が立ちました。そして、未緒の絶望を目の細やかな動きだけで表現するさとみちゃんは凄いなとあらためて思いました。

ラストの雨の屋上でのシーンは、完全に耳が聞こえなくなった未緒の動揺と悲しみの慟哭が胸を打ちました。でも、完全に耳が聞こえなくなったことにしたことで、原作の加賀の「俺があなたを守ってみせる、君が好きだから」のセリフと、加賀と未緒の口づけが無かったことが残念です。これじゃあ未緒はいつまでも眠りの森の魔法に囚われたまま目覚められないじゃないですか(-ε-#)ブーブー、なんてね。

全体的に、加賀と未緒の心を通わすエピソードが少ないため、原作より恋愛要素が薄れていたような気がします。これは、加賀恭一郎シリーズの推理ドラマとしての面を重視した結果かなと思います。

小説の方では、加賀と未緒のその後も感じさせる内容になっていますので、是非、原作を読んでいない方は、読んでみてください。

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