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フェルメール展 感想

さとみちゃんが音声ガイドを務めているフェルメール展を観に上野の森美術館に行ってきました。

フェルメール展 看板
フェルメール展 看板

朝早くならそれほど込んでないだろうと9:30からの回にしたのですが、9:00ぐらいに私が行ったときにはもうこの通り行列ができてました。しかし、待つこと30分ぐらいほぼ時間どおりに入場できました。

フェルメール展 入場行列
フェルメール展 入場行列

美術館の中に入るとチケットのもぎりの後、音声ガイド用のコントロール端末とイヤフォンを別々に渡されます。その後直ぐに音声ガイドの使い方の説明が壁に貼ってあったのですが、サッと見て理解したと思ってまずは順路の表示に従って2階の展示室へ。(実は理解していなかったんですが。)

最初の1と書いてある絵を見て音声ガイドを再生しようと1番を入力して再生。するとさとみちゃんの声で音声ガイドが流れ始めたのですが、話していることと目の前の絵の内容が全く違う。あれ、っと思って周りを見渡すと少し離れたところにそれらしい絵画が。音声ガイドの使い方をわかっていなかったことに気づきちょっとあせりました。

ここで、周りの人が受付でもらった小冊子を見ているのに気づき、もしかしたらと思って開くとありました音声ガイドの操作方法。再生方法は合っていたのですが、全ての絵画に音声ガイドが有るわけではなく(((1)))のようなマークの付いている絵画のみに音声ガイドがあるということがわかりました。

音声ガイドの操作方法
音声ガイドの操作方法

早くさとみちゃんの声で説明が聞きたいので音声ガイドのある絵画のところに行きたかったですが、せっかくなので展示されている絵画の一つ一つをじっくり鑑賞することにしました。先ほど見た小冊子にはそれぞれの絵画の説明書きがあり、その絵が描かれた時代背景や解釈が書かれています。

展示されている絵画はそれぞれテーマ毎に章立てされて展示されており、2階はフェルメールと同時期の17世紀のオランダの画家達の絵画が展示されていました。

フェルメール展 会場マップ
フェルメール展 会場マップ

これまで美術館で生の絵画を見たことはなかったので、まず、その描写の緻密さに驚きました。フェルメール以外で特に印象に残った絵画は、ヘラルト・ダウの「本を読む老女」です。顔の皮膚の質感が驚くほどリアルで、いったいどうやって描いているんだろう顔を近づけて目をこらして見るんですが、簡単にわかるはずもなく、ただ、感心するばかりでした。

ハブリエル・メツーの「手紙を書く男」、「手紙を読む女」は2枚で1対の作品であること、何の変哲も無い手紙を書いたり読んだりしている絵にプレイボーイな男性とそれに振り回される女性の物語が暗示されていることなど、また、黄色い服がフェルメールの影響を受けて書かれていることをさとみちゃんの音声ガイドで説明されていて、絵画と絵画の間、画家の間のつながりがあることが私には新しく、興味深く鑑賞できました。

ちょっとおもしろかったのが、ヨブ・ベルクヘイデの「パン屋でレースを編む女」の解説です。(音声ガイドはありません)

「レースを編む女」と「パン屋」の主題を組み合わせた画題の意図は不明である。
フェルメール展小冊子より

不明なのかよ!って、解説の放り投げてる感じに思わず心の中でツッコみました。(笑

さて、2階を一通りまわって、1階に降りるとプロジェクターでフェルメールにまつわる映像が投影された部屋があり、そこを通り過ぎると真っ白な通路があります。まるでいったんそこでこれまでの絵画の印象をリセットしてフェルメールの世界にどっぷり浸かれるように用意された空間の様でした。

後で知ったのですが、音声ガイドにはボーナストラックがあり、さとみちゃんいわく、この白い通路で聞いてフェルメールルームへ気持ちを高めて欲しいとのことでしたので、これから行く方は忘れずに聞いて下さいね。私は知らなかったので完全に聞きそびれました。orz

肝心のフェルメールの絵については、やはり「光の魔術師」という異名のとおり、その光の描写技法に目を奪われました。「ワイングラス」の女性の布地の艶々とした質感、銀色の刺繍、「真珠の首飾りの女」の黄色い服の袖や襟のモコモコ(ファー)など、とても絵の具で描いたとは思えないです。モコモコなどは細かいファーに当たる光と影をどれだけ緻密に描いているのかと。布地の質感にしてもやはり繊維のキメの一つ一つを光と影で表現しているのかなと考えながら鑑賞しました。

「牛乳を注ぐ女」ではさらに、女性の黄色い上着、腰に巻いた青い布などもそうですが、特にパンの描写が圧倒的なリアリティーをもって描写されていて、多分、絵の具の凸凹とかその辺まで計算して描かれてるんじゃないかとすら感じました。もしかしたら光を当てる方向によっても違った見え方をするかもしれません。

さとみちゃんも言っていましたが、本当に生で観ないと、この凄さはわからないと思いました。

服や小物類がリアルに感じられるのに対して不思議と描かれている女性がリアルでないように感じました。これは、浮世絵や平安時代の絵巻物などに描かれている女性が写実的に描かれているとは思えないのと同様に、現在の女性とは化粧方法や容姿の美醜に関する感覚(薄い眉、ほとんど見えないまつげ、広いおでこなど)が違っていたりしているがためにそう思えるのかなと思いました。

絵画ファンの方には冒涜と取られるかもしれませんが、フェルメールの絵に登場する女性に現代的なメイクを施したらものすごくリアルな絵になるんじゃないでしょうか。

あと、音声ガイドで説明されていた絵画に描かれている小物類がいろいろな事を暗示していると言うことが興味深かったです。リュートや楽譜は恋や恋愛を、海に浮かぶ船は恋人の不在を、また、山羊と鳩の群れは欲望の象徴であること、そういうことをわかって昔(というか17世紀オランダ)の絵画を見るといろんな事が見えてくるんだなということを教えてもらいました。

さとみちゃんが音声ガイドの最後でフェルメールの絵画はまるでSNSの様と語っていましたが、当時の絵画が今の写真の役割を果たしていたと考えると、さとみちゃんのSNSの様という感想はまさに言い得て妙と思えます。

現代において女性が牛乳を注いでいる写真をSNSで投稿したとして「いいね」がもらえるとは到底思えないんですけど、このころのオランダでは歴史画や宗教画より、風俗画がウケていたみたいなんですね。

1650年から1670年にかけての時期、個人が所有する絵画における歴史画の比率は全体中の6番目に低下し、一方風俗画を含む他のタイプの絵画は、それに反比例するように増えていった。家庭の室内情景という近代的な主題は、幅広い大衆的な人気を獲得していた。
フェルメール展図録集「差異の眼差し-フェルメールとオランダ美術」ピーテル・ルーロフスより

これらのちょっとした何の変哲も無い日常風景がなぜ「いいね」をもらえた(売れた)のかSNS的発想で考えると、女性が浮き浮きしておしゃれしてるこれからデートなのかなとか、おいおいそんなにワイン飲ませてどうするの?とか想像できて、当時のオランダの人々もゴシップ好きだったのかなと思いました。

最後に、さとみちゃんの音声ガイドのおかげで、絵画の描かれた背景や絵画に描かれている物に意味があることなどを理解することができて、単に絵画を鑑賞するよりも、より深く絵画の世界を堪能することができたと思います。これから行く方は石原さとみファンでなくても是非音声ガイド付きで鑑賞することをお勧めします。

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